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東京地方裁判所 昭和52年(ワ)1104号 判決

原告 郭姫洙

右訴訟代理人弁護士 圓山潔

同 阿部博道

被告 朝日化学産業株式会社

右代表者代表取締役 金錫琪

被告 株式会社水谷商店

右代表者代表取締役 水谷新

右被告ら訴訟代理人弁護士 中川清太郎

同 中川みどり

同 鈴木則佐

右被告ら訴訟復代理人弁護士 永島寛

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告朝日化学産業株式会社は、原告に対し、別紙物件目録(一)の建物部分及び同目録(二)のブロック塀をそれぞれ収去して、同目録(三)の土地を明渡せ。

2  原告と被告らとの間において、被告らが、別紙物件目録(四)の土地について、通行権を有しないことを確認する。

3  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告は、東京都葛飾区四つ木三丁目一七番一宅地(地積一三八・九八平方メートル―以下「本件土地」という。)を所有している。

2  本件土地は、別紙図面(一)のイ、ロ、ハ、ニ、ホ、ヌ、ヘ、ト、イの各点を順次直線で結んだ線分内の土地である。

3  被告朝日化学産業株式会社(以下「被告朝日化学」という。)は、昭和四八年ごろ、別紙物件目録(一)の建物部分及び同目録(二)のブロック塀を築造し、以来、右建物部分及びブロック塀を所有して、本件土地のうち同目録(三)の土地部分を占有している。

4  被告らは、本件土地について通行権を有すると主張している。

5  よって、原告は、被告朝日化学に対し、本件土地の所有権に基づき、別紙物件目録(一)の建物部分及び同目録(二)のブロック塀を収去して同目録(三)の土地を明渡すことを求めるとともに、被告らに対し、被告らが本件土地のうち別紙物件目録(四)の土地について通行権を有しないことの確認を求める。

二  請求原因に対する認否

(被告朝日化学)

1 請求原因1の事実は認める。

2 同2の事実は否認する。

本件土地は、別紙図面(二)のA、B、C、D、E、F、G、Aの各点を順次直線で結んだ線分内の土地である。

3 同3の事実のうち、被告朝日化学が、別紙物件目録(一)の建物部分及び同目録(二)のブロック塀を築造し、所有していることは認めるが、その余は否認する。右築造をしたのは昭和三八年一〇月ごろであり、しかも、右建物部分及びブロック塀は、被告朝日化学所有土地上に存在するものである。

(被告ら)

4 同4の事実については、被告らが、通行権を主張するのは、後記のとおり、別紙図面(二)のA、H、I、C、D、E、F、G、Aの各点を順次直線で結んだ線分により囲まれる部分であるから、右の限度でこれを認め、その余は否認する。

三  抗弁

1  別紙物件目録(三)の土地についての原告の所有権喪失

(金による時効取得)

(一) 金錫琪(以下「金」という。)は、昭和三五年春ごろから、東京都葛飾区四つ木三丁目一七番六の土地(以下「一七番六の土地」という。)を大久保誠司(以下「大久保」という)から賃借し、一七番六の土地及び別紙物件目録(三)の土地を被告朝日化学の工場、物置場として継続して使用していたところ、昭和三七年一一月ころ右大久保から一七番六の土地を買い受け、これにより別紙物件目録(三)の土地について所有の意思をもって占有を始めた。

(二) 金は、大久保から一七番六の土地を賃借する際に、別紙物件目録(三)の土地は右賃借地に含まれるものと信じていたのであって、一七番六の土地を買受ける際に、別紙物件目録(三)の土地が一七番六の土地に含まれると信じるについて過失はなかった。

(三) 金は、別紙物件目録(三)の土地を昭和四七年一一月ごろまで継続して占有したので、そのころ右土地の所有権を時効により取得した。

(四) 被告朝日化学は、昭和四八年三月ごろ、金から一七番六の土地と別紙物件目録(三)の土地の所有権を取得した。

(五) 被告朝日化学は、本訴において右時効を援用する。

(被告朝日化学による時効取得)

(一) 仮に、1(一)により、金が別紙物件目録(三)の土地についての自主占有を開始したと認められないとしても、金は昭和三八年一〇月ごろ、右土地上に、別紙物件目録(一)の建物を築造し、その南側に同目録(二)のブロック塀により囲まれたゴミ置場を設置して、同目録(三)の土地について、所有の意思をもって占有することを表示した。

(二) 金は、大久保から一七番六の土地を賃借する際に別紙物件目録(三)の土地は右賃借地に含まれるものと信じていたのであって、(一)の建物築造、ゴミ置場設置の際に、別紙物件目録(三)の土地が一七番六の土地に含まれると信じるについて過失はなかった。

(三) 被告朝日化学は、昭和四八年三月ごろ、金から一七番六の土地の所有権を取得するとともに、別紙物件目録(三)の土地の占有を承継し、所有の意思をもって占有を始めたが、その際、別紙物件目録(三)の土地が、一七番六の土地に含まれると信じるについて過失はなかった。

(四) 被告朝日化学は、別紙物件目録(三)の土地を昭和四八年一〇月ごろまで継続して占有したので、そのころ右土地の所有権を時効により取得した。

(五) 被告朝日化学は、本訴において右時効を援用する。

2  通行地役権

(一) 本件土地を含めて周辺の土地は、昭和三四年当時大久保の所有であり、同人は、右土地の南西側の一部(本件土地を含む。)を自ら使用していたほか、残りの土地は区分して中川推吉、宇田川勝太郎(以下、「宇田川」という。)、国本在裕こと李済佑、大滝清一郎らに賃貸していたが、右大久保の所有する土地は、昭和三四、五年当時、その南側を東京都の六方排水場及び都有地により、西側を田島金治所有地により、北側を高橋金次所有地により、東側を灌漑用の水路により囲まれた袋地であり、直接公路に通じてはいなかった。

右土地の借地人らは、事実上南側都有地を通って綾瀬川方面の公路に通行していた。

(二) 右大久保の所有する土地のうち現在の東京都葛飾区四つ木三丁目一七番五、同番七を借地していた宇田川が、昭和三五年初めごろ、右借地上の工場を右借地権とともに売りに出していたので、被告朝日化学の代表者である金は、これを買い受けようとしたが、右土地の状況が(一)のとおりであったため、宇田川に対し、右土地は被告朝日化学の工場敷地として使用するので、同会社の業種の性質上、製品その他の搬入、搬出に中型トラック(四トン車)の出入を必要とするから、その為の道路が確保できない土地では買うことはできないと申し入れたところ、宇田川は大久保と話し合って、右宇田川が賃借していた土地のみならず、その周辺の土地及び居住者のためにも、新たに綾瀬川方面の公路に直接通行できる巾員四メートルの道路を造り、道路位置指定を受けようということになり、大久保の所有する土地の他の借地人、借家人らもこれに合意した。

そこで、金は、昭和三五年三月一六日ごろ、右工場及び右借地権を買い受けた。

(三) その後同年四月ごろ綾瀬川方面に直接通行できる巾員四メートルの道路(以下「本件道路」という。)を造るに際し、大久保所有の建物が本件道路開設予定地の中に存在していたので、大久保は右建物を本件道路の南西側に移して(この建物が、現在原告の所有となっている。)、道路の敷地部分巾員約四メートルを確保するとともに、大久保の所有する土地の南側に存する都有地に至るまで、巾員四メートルの道路敷地を提供し、また、本件道路開設予定地の一部は既に借地であったから、金、被告株式会社水谷商店の所有する東京都葛飾区四つ木三丁目一七番四の土地の当時の借地人前記李済佑その他の借地人らも、それぞれ、その借地の一部を本件道路敷地として提供し、さらに、本件道路の南側と綾瀬川方面の公路との間の都有地については、いずれその払下を申請することとした。本件道路については、道路位置指定の申請はなされないままであったが、右都有地(当時の東京都本田若宮七番地)については、昭和三七年六月六日に東京都から通行路として使用することの承認がなされた。

(四) 以上の経緯により、大久保と金、中川推吉、大滝清一郎、李済佑らは、昭和三五年四月ごろ、本件道路敷地部分について相互に通行地役権を設定した。

仮に、そうでないとしても、金は昭和三七年一一月ごろ東京都葛飾区四つ木三丁目一七番五ないし八の土地を、李斗千は同年八月ごろ同番四の土地を、関根京次は昭和三八年七月ごろ同番一一及び一二の土地をそれぞれ大久保から取得したが、(一)ないし(三)の経緯により既に道路として使用し、右各土地にとって唯一の公路に通じる道路であった本件道路について、金、李斗千、関根京次が右土地を取得した際、それぞれ大久保との間で、それぞれが取得した土地を要役地とし、大久保所有の同番一の土地(当時は現在の同番一七、一八の土地を含めて一筆の土地であった。)を承役地とする通行地役権を設定した。

(五) 右通行地役権の存する本件道路の本件土地内の部分は、別紙図面(二)のA、H、I、C、D、E、F、G、Aの各点を順次直線で結んだ線分により囲まれる部分である。

(六) その後被告朝日化学は、同番一七の五ないし八、一一、一二の各土地を、被告株式会社水谷商店は同番四の土地を取得したので、右通行地役権を取得した。

(七) 原告は、本件道路に通行地役権が設定されていることを知りつつ、昭和三九年七月ごろ大久保から本件土地を買い受けた。

3  囲繞地通行権

被告朝日化学所有の東京都葛飾区四つ木三丁目一七番五ないし八、同番一一、一二の各土地、被告株式会社水谷商店所有の同所同番四の土地は、いずれも袋地であるから、被告らは、公路に至るため、右各土地の囲繞地である原告所有の本件土地を通行する権利を有する。右通行し得る土地の範囲は、以下に述べる事情によれば、2(五)記載のとおりである。(以下、「本件通路」という。)

(一) 被告朝日化学、同株式会社水谷商店所有の右各土地は、いずれもその大半が工場用地として使用されている。

(二) 被告朝日化学は、その所有の各土地上においてビニール原料製造業を営んでいるのであるが、その業種の性質上、原材料、製品等の搬入、搬出に常時四トントラックの運行を必要不可欠としており、昭和三五年以来、本件通路を右用途の為に通行してきているし、仮に、本件通路の巾員が現状の四メートルより減少するとすれば、被告朝日化学の操業は全く停止せざるを得なくなり、同会社は、その存立そのものが危うくなる。

(三) 被告株式会社水谷商店所有土地上の同会社所有建物の賃借人綿引四郎は、右建物を工場兼居宅として使用しており、本件通路を車両通行のため必要としている。

(四) 本件通路は、もともと、被告ら所有の各土地とその周辺土地を有効に利用するため、前記2(一)ないし(三)の経緯により、開設されたもので、被告ら所有の各土地と本件通路とは、密接不可分の関係にあり、金は昭和三七年一七番五ないし八の各土地を買い受ける際、本件土地の当時の所有者大久保から、本件通路を被告朝日化学の通行のために現状にて使用することの承認を得た。

(五) 被告株式会社水谷商店は、昭和四五年六月ごろ、一七番四の土地を、同土地と本件通路とは、その往来のために、密接不可分の関係にあり、現状のままで本件通路を通行できるものとして買い受けたのであり、前記綿引四郎は一〇年以上の間現状により本件通路を通行している。

(六) 原告が、本件土地を買い受けるに際し、金は、その仲介をしたのであり、金が、被告朝日化学の通行の妨害になるような物件の仲介をする理由はない。

(七) 原告は、本件土地を買い受けた後も、本件土地上に居住したことがないばかりでなく、本件土地上の原告所有の建物の賃借人中良夫も本件通路を公路に至る唯一の通路として通行している。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1は争う。

2  抗弁2は争う。

大久保所有の各土地は、昭和三四、五年当時袋地ではなかった。

3  抗弁3の事実のうち、被告ら所有の各土地がいずれも袋地であること、被告らが公路に至るために右各土地の囲繞地である原告所有の本件土地を通行する権利を有することは認めるが、その余は否認する。右囲繞地通行権の認められる範囲は、本件土地の南東の巾員二メートルの部分に限られるべきである。

第三証拠《省略》

理由

一  請求原因1の事実は原告と被告朝日化学との間において争いがない。

二  そこで、本件土地の範囲について検討する。

《証拠省略》によれば、別紙図面(一)のイ、ロ、ハ、ヌ、ヘ、トの各点はそれぞれ別紙図面(二)のA、B、C、E、F、Gの各点と同一の地点であり、また、別紙図面(一)のヌ、リ点を結ぶ直線を延長した線と同図面ハ、ニ点を結ぶ直線を延長した線との交点をヨ点とすると、ヨ点は、別紙図面(二)のD点と同一の地点であると認められ、右認定を覆えすに足りる証拠はない。そうすると、原告と被告朝日化学との間において、本件土地の範囲につき争いのあるのは、別紙図面(一)のニ、チ、ホ、ワ、ヌ、リ、ヨ、ニの各点を順次直線で結んだ範囲(以下、「本件係争部分」という。)に限られることになる。

そこで、本件係争部分が本件土地に含まれるか否かにつき検討するに、本件全証拠によるも、本件係争部分が本件土地に含まれると認めることはできない。かえって、《証拠省略》によれば、被告朝日化学は昭和三五年ごろから本件係争部分をゴミ置場として使用していたこと、本件係争部分に存する被告朝日化学所有の東京都葛飾区四つ木三丁目一七番六の二の建物(別紙物件目録(一))は、昭和三八年一〇月ごろ同番六の一の建物の南側に接続して新築されたものであり、被告朝日化学は同建物の南側に、同じころ、ブロック塀(別紙物件目録(二))に囲まれたゴミ置場を設置して使用していたこと、原告が本件土地を大久保から買い受けたのは、昭和三九年七月ごろであり、右買い受けに際し、原告は、現地に臨んで本件土地及び周辺の状況を確認したこと、原告が大久保から本件土地を買い受ける際には、被告朝日化学代表者金がその仲介をしたこと、昭和三九年以来、被告朝日化学所有の右建物について南側に増築された事実はないこと、が認められるのであって、右事実に弁論の全趣旨を総合して判断すれば、本件係争部分は、被告朝日化学所有の東京都葛飾区四つ木三丁目一七番六、一二の各土地及び被告水谷商店所有の同番四の土地の一部であると認めるのが相当である。

なお、本件土地の実測図は、境界について原告の指示を前提として作成されたことが、その記載から明らかであり、本件係争部分(特に別紙図面(一)の(ヨ)点、同(二)の(D)点)について何らかの客観的根拠をもって境界を確定した上で測量がなされたものとは認め難く、また、鑑定の結果(特に、公図・基本図・合併図附図第2図)によれば、本件係争部分が本件土地に含まれるかの如くであるが、右鑑定は、公図と実測図を重ね合わせるという方法でなされているところ、公図は、その性格上、地点間の距離あるいは面積などの定量的な問題については必ずしも正確なものではないことは明らかであるから、右鑑定の結果により直ちに、本件係争部分が本件土地に含まれるものと認めることはできない。

以上によれば、本件土地の範囲は、別紙図面(一)のイ、ロ、ハ、ニ、ヨ、リ、ヌ、ヘ、ト、オ、イの各点を順次直線で結んだ範囲(別紙図面(二)のA、B、C、D、E、F、G、Aの各点を順次直線で結んだ範囲と一致する。)であることになるから、原告の請求のうち、被告朝日化学に対し、本件土地の所有権に基づいて、別紙物件目録(一)、(二)の物件を収去して同目録(三)の土地の明渡を求める部分は、その余の判断をなすまでもなく理由がない。

三  請求原因4の事実のうち、被告らが別紙図面(二)のA、H、I、C、D、E、F、G、Aの各点を順次結んだ線分により囲まれる部分について通行権を主張していることは当事者間に争いがない。

四  そこで、抗弁2について判断するに、仮に、被告ら主張の通行地役権の設定契約があったとしても、被告らは、通行地役権の設定登記を経由したとの主張をしていないし(《証拠省略》によれば、右登記はなされていないことが明らかである。)、また右通行地役権を登記なくして承役地(本件土地)の譲受人である原告に対抗し得るとの主張もしていないのであり(原告が通行地役権の設定されている土地であると知りつつ、本件土地を取得したとしても、それのみでは、右通行地役権を登記なくして対抗し得ない。)、本件全証拠によるも、原告が、登記の欠缺を主張するについて正当な利益を有する第三者に該当しないものとは認め難いので、抗弁2は、その余の判断をなすまでもなく理由がない。

五  抗弁3について判断する。

抗弁3本文の事実のうち、被告朝日化学所有の東京都葛飾区四つ木三丁目一七番五ないし八、同番一一、一二の各土地、被告株式会社水谷商店所有の同所同番四の土地が、いずれも袋地であり、被告らが、公路に至るため、右各土地の囲繞地である原告所有の本件土地を通行する権利を有することは当事者間に争いがない。

そこで、被告らが本件土地(前判示二の範囲である。)のどの範囲を通行し得るかについて検討する。

《証拠省略》によれば、右被告ら所有地はいずれも工場敷地として使用されていること、被告朝日化学は、その所有の右土地上において、ビニール原料製造業を営んでおり、原材料、製品の搬入、搬出に常時四トントラックの運行が必要であること、そのためには、最低四メートル程度の巾員を有する通路が要求されること、右四トントラックの通行が不可能となれば、被告朝日化学の操業に重大な支障が生ずること、被告株式会社水谷商店所有地上の建物の賃借人綿引四郎は同建物において、ボール箱製造業を営んでおり、原材料、製品の運搬のために、自動車の運行を必要としていること、原告は、本件土地を買い受けた後、本件土地上に居住したことはなく、本件土地上の原告所有建物を中に賃貸しているにすぎず、被告らが本件通路を通行することは原告の本件土地利用にさしたる不利益を及ぼすものではないことが認められ、さらに、《証拠省略》によれば、昭和三四、五年当時本件土地周辺の土地は大久保の所有であったが、同人所有の土地が袋地であったため、金が大久保所有の現在の東京都葛飾区四つ木三丁目一七番五、七の土地の借地権及び同借地上の工場を宇田川から買い受けるに際して、大久保所有の土地の借地人及び居住者と大久保とが協議して、大久保所有の土地内に同土地の南側に接する都有地に通ずる通路を設置することになったこと、被告朝日化学は昭和三五年三月ごろ右借地権及び右工場を買い受けて以来、右開設された通路を原材料、製品の搬入、搬出のために使用してきており、その使用の型態は、前記現在におけるそれと異ならないものであったこと、前記綿引四郎は、現在まで一〇年以上の間、本件通路を通行していること、以上の事実が認められ(る。)《証拠判断省略》。

右事実によれば、被告ら主張の別紙図面(二)のA、H、I、C、D、E、F、G、Aの各点を順次直線で結んだ線分により囲まれた部分に囲繞地通行権を認めることが、被告らのために必要であるとともに囲繞地のために最も損害の少いものと認められる。

以上によれば、被告らの抗弁3は理由がある。

六  以上によれば、原告の本訴請求はいずれも理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 荒井真治 裁判官 野尻純夫 裁判官関野杜滋子は転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官 荒井真治)

〈以下省略〉

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